無題

一人暮らし男子大学生です。

9月17日

 大学の講義が始まって一週間。

 夏休み気分は抜けきっていないが、どうにか乗り切ることができたようだ。

 

 週末という響きは良い。

 夏休みという響きも嫌いではなかったが、長期休暇というのはどうにも取り扱いが難しいものだ。休暇中の予定や目標が立てづらく、どうにも行方不明になってしまう。今年はこの情勢もあって色々な予定が頓挫してしまい、その分調子が狂ってしまった。

 金曜日の講義が終わってから始まるこの「週末」という時間は、短いからこそ予定を立てやすく予測もしやすい。よって、取り扱いが容易くて好きだ。ただひたすら寝るもよし。趣味の勉強に使うもよし。次の一週間という手ごろな目標があるのも良いところかもしれない。何にせよ、週末独特の特別感はたまらないものがある。

 

 さて、今回の週末は久々に勉強に充てることにする。

 最近、読書をする体力がようやく戻ってきたように感じる。この1年半で積んでしまった数冊を読み進めるのもいいが、折角なら新しい本に出会いたいところだ。

 とはいえ、近所には本屋がない。どこかに良い本屋は無いものか。東京なのだから、良き本屋の一つや二つは見つかってほしい。

 

 そんなこんなで、講義を終えた私は丸善丸の内本店に向かうことにした。

 都内で独り暮らしを始めて間もなく1年半になるが、ここの本屋に足を運んだのは初めてだ。私は、本屋を目的に出かけるならクソデカ本屋を目指すのが良いと思っている人間だ。都内にクソデカ本屋を求めた時に一番行きやすかった本屋が、たまたまここだった。

 しかし、空気が濃い本屋だ。密度が高い。東京らしい本屋だ。

 狭めの感覚で並ぶ棚には足元から頭の少し上の高さまでびっちりと本が詰められ、どうにも圧迫感というか窮屈さというか、そんな雰囲気を感じる。オフィス街ということもありスーツ姿の人間が多かったのも、その窮屈さの要因かもしれない。

 窮屈さがあるとどうにも視野が狭まってしまい、目線の高さの棚しか見えなくなってしまうことに気付く。本屋に行くという体験の中でそれは損なことに感じる。出会える本に出会えないということは大きな損失だと思ってしまうからだ。

 反対に、こういった慣れない雰囲気の本屋だからこそ、これまでは手に取らなかった本を手に取ることができたのかもしれないとも感じる。そう思うと、出会えなかった本には何があってもやっぱり出会えないのかもしれないな。人生みたいだ。

 本屋は、行くだけで色々な気付きがあって面白い。一人で行くのも良いが、友人や恋人と行くのも新たな発見があって面白いと思う。恋人、いないんですけどね。

 

 電子の時代になりつつあるが、本屋での体験は本屋でしかできないと思っている。直観に従って脚を動かし、数多の書籍から自分だけの良書を見つける。その瞬間は何物にも代え難く、尊い

 散歩の途中や仕事帰り、ふとした時に本屋に立ち寄ってみると、思わぬ出会いがあるかもしれない。そんな体験をしてみてほしい。

 手軽に物が手に入る時代だからこそ少しだけ遠回りしてみる。

 そうすることで、日々は少しずつ面白くなっていくはずだ。